憎しみの果て
ずっと以前に、海外の犯罪事件を再現したテレビを見たのですが、
とても衝撃を受けたので、何年も経っているのに記憶に残ってます。
その事件はアメリカで実際に起こった凶悪事件を再現したものです。
多くの罪のない人を殺した殺人犯が、逃げる途中で一軒の家に立てこもります。
犯罪者は黒人で体も大きく、いかにも凶悪犯という顔つきで、その家に住む中年の女性を人質に立てこもりました。
上空には現場を生中継しようとヘリコプターが飛び、家の周りには多くの警察官が包囲しています。外に出たらすぐに射殺されてしまうような緊迫の場面。
男は完全に逃げ道を絶たれてしまい自暴自棄になり、人質の女性を巻き添えに死を考えていました。
でもそのような身の危険を感じながらも、女性はその男が罪を犯したことを深く苦悩している様子を感じます。
男は自分ではどうしようもなかった人生を生きてきました。
自分の境遇を嘆き、深い悲しみや怒りの中から救ってもらいたい思いがあることを女性は感じたのです。
男も徐々に、そんな女性に心を許し話始めます。
「多くの人を殺めてしまった」
「自分にはもう死しか残されていないが死にたくない。」
「でも世界中の人が私を憎んでいるだろう」
女性は身の危険が迫っていることを感じていましたが、男の悲しみを感じ勇気を出して伝える決心をします。
「いいえ、あなたにできることはまだあります。」
「あなたは捕まった牢屋の中で、同じような境遇で生きてきた人の気持ちをわかってあげることができます。それはあなたにしかできません。あなたはまだ自分の生き方を変えるチャンスが残されています。」
「あなたの未来は閉ざされてない。」
その言葉を聞いた男は、少し考える時間をくれといい残し部屋にこもります。
しばらくして部屋から出たとき、男は人質の女性とともに外に出て捕まる道を選びました。
男が射殺されないように女性が呼びかけながら、男はそのまま警察に確保され牢屋に入ったという事件の一部始終です。
この事件は、凶悪な犯罪者を一人の勇敢な女性によって捕まえることができた「奇跡の事件」として全米に広がり話題になりました。
かなり前のテレビ番組なので、細かい言葉のやり取りは記憶に残っているものと実際は少し変わっていると思いますが、基本的にこのようなストーリーの事件でした。
私がなぜこの事件が心に残っていたのか…
それは、この女性の勇気ある行動とその言葉にも感動したのですが、それ以上にこの男がそんな人生を送らざるを得なかった悲しみを感じました。
きっとこの人は最初から悪い人ではなかったと思います。
どう頑張っても抗えない社会のひずみの犠牲者であり、それを知った上で自分の罪を深く認め、そして憎しみの先にある「何か」、それを信じようとしたのではないかと…
憎しみの果てにあるものは一体何なんだろう?
憎しみの果てにあるものは憎しみ…そう思っていたけれど
もしかしたら何かちがうものも見つけられるのかもしれないな…
憎しみを体験した人にしかたどり着けない世界。
それはけっして悪い結末だけではない…
もしかしたら今、世界にはそんな考えも必要かもしれない…